二十代後半の会社員Aさんは、長年、生理の二日目から三日目にかけての激しい下腹部痛と腰痛に悩まされていました。鎮痛剤を服用すればなんとか仕事は続けられるものの、年年痛みが強くなっていることに不安を感じつつも、産婦人科を受診することに抵抗を感じていました。生理痛は誰にでもあるものだし、自分だけが特別ではないと言い聞かせ、受診を先延ばしにしていたのです。しかし、ある時を境に生理期間以外にも下腹部に鈍痛を感じるようになり、重い腰を上げて産婦人科を受診することを決めました。受診当日、Aさんは非常に緊張していましたが、医師は落ち着いたトーンで問診を行い、Aさんのこれまでの経過を詳しく聞き取ってくれました。医師は、痛みの強さが年々増していることや、生理以外の期間にも痛みがあることから、器質的な原因を疑い、超音波検査を提案しました。Aさんは性経験があったため、経膣エコーによる検査が行われました。内診台に座り、カーテン越しに医師が機械を挿入する際、Aさんは緊張で体に力が入ってしまいましたが、看護師が優しく声をかけ、ゆっくり呼吸するように促してくれたことで、数分で検査は終了しました。検査の結果、Aさんの左側の卵巣には約四センチほどのチョコレート嚢胞があることが判明しました。これは子宮内膜症の一種で、卵巣の中に子宮内膜に似た組織ができ、生理のたびに出血が溜まって古くなった血液がチョコレート状になる病気です。医師からは、これが原因で周囲の組織と癒着が起き、強い痛みを引き起こしていると説明がありました。Aさんは、ただの体質だと思っていた痛みに原因があったことを知り、ショックを受けながらも、現状を把握できたことに安堵しました。医師と相談の上、Aさんはホルモン療法を開始することにしました。幸い、手術が必要な大きさではなかったため、まずは薬で病気の進行を抑え、症状を緩和させる方針となりました。治療を開始して三ヶ月が経つ頃には、生理痛は驚くほど軽くなり、日常生活に活気が戻りました。Aさんの事例は、生理痛を単なる我慢すべきものとして放置することの危うさを教えてくれます。もし受診をさらに先延ばしにしていたら、嚢胞がさらに大きくなり、緊急手術が必要になっていたかもしれません。産婦人科で何が行われるかを知り、勇気を出して受診したことが、Aさんの健康を守る大きな分岐点となったのです。
生理痛の影に隠れていた疾患を病院で発見した事例