病院でのスマートフォン利用について、電波管理の専門家に話を伺いました。長年、院内の電波環境を調査してきた専門家によれば、スマホの電波が医療機器に及ぼす影響についての理解は、この十数年で大きく変わったといいます。かつてのガラケー時代に使用されていた電波は出力が強く、一部の旧式な心臓ペースメーカーに対して影響を与える可能性が確かにありました。そのため、一律に「電源オフ」が推奨されていたのです。しかし、現在の4Gや5Gといった通信規格は、高度な電力制御技術によって不要な電波放射が極限まで抑えられています。また、医療機器側も国際的な電波耐性基準に準拠して設計されるようになったため、一般的な病室や待合室での使用で問題が起きることは極めて稀になりました。専門家が強調するのは、電波の「距離」の概念です。最新の指針では、ペースメーカーの装着部位からスマホを十五センチから二十センチ程度離していれば安全であるとされており、普通に手に持って操作する分には全く問題ありません。しかし、だからといって無制限にどこでも使っていいわけではないと専門家は警告します。例えば、ICUや手術室では、微弱な生体信号を測定するモニターや、生命維持に直結する高度な機器が密集しています。こうしたエリアでは、不測の事態を避けるために依然として制限が設けられています。また、病院特有の現象として「病院内PHS」の存在があります。医療スタッフが連絡用に使用しているPHSは、スマホとは異なる周波数帯を使用しており、院内での安定した通信を確保するためにインフラが最適化されています。そこにスマホのテザリング機能などが干渉すると、スタッフ間の緊急連絡に支障が出る恐れもあるため、病院側が指定する通信ルールを守ることが重要です。専門家は「電波は見えないものだからこそ、正しい知識と謙虚な姿勢が必要だ」と語ります。技術は進化しましたが、それはリスクがゼロになったことを意味するのではなく、リスクを適切に管理できるようになったことを意味します。医師やスタッフの指示に従うことは、技術的な根拠に基づいた安全確保の一環であることを理解すべきです。
精密機器とスマートフォンの電波が及ぼす影響を専門家に聞く