手足口病を経験した親たちの掲示板やSNSでは、毎日のように「一度かかったのにまた発疹が出た」「免疫はつかないのか」という悲鳴に近い書き込みが繰り返されています。この疑問に対して、ブログという形式を借りて、私なりの調査と実体験を交えた具体的な答えをまとめてみたいと思います。まず、大前提として言えるのは「免疫は確実につく。ただし、それはその時戦った特定のウイルスに対してだけである」という冷徹な事実です。私たちの体の中にある免疫システムは、非常に優秀な名探偵のようなもので、一度顔を見た犯人のことは決して忘れません。しかし、犯人が変装をしていたり、全く別の組織の人間だったりすると、名探偵であっても見逃してしまうのです。手足口病の原因ウイルスは、現在確認されているだけでも数十種類あります。主要なものだけでも数種類が常に流行の順番を争っています。ですから、「今年の手足口病」の免疫はついても、「来年の手足口病(別の型)」の免疫は持っていない、というのが私たちが何度も感染を繰り返す最大の理由です。また、免疫がつくスピードや強さには個人差があります。同じウイルスに接しても、症状が全く出ない「不顕性感染」で済む子もいれば、高熱を出して寝込む子もいます。これはその子が過去に似たようなウイルス(ヘルパンギーナなど)にかかったことがあり、かすかな記憶が部分的に役立っている場合もあれば、単にその時の体調によって免疫の立ち上がりが早かっただけという場合もあります。免疫がつくまでには、通常、発症から一週間から十日程度の時間が必要です。その間、体の中では必死に「犯人の指名手配書」を作成しているわけです。一度この手配書が完成すれば、同じウイルスが次に来た時には、症状が出る前に撃退できるようになります。だから、子供が成長して十歳、十一歳となる頃には、街中に溢れる主要な手足口病ウイルスの指名手配書が体内に揃い、結果として発症しなくなるのです。つまり、今繰り返している感染は、未来の無敵な体を作るための「データベース構築作業」そのもの。そう考えると、少しは気が楽になりませんか。免疫は魔法のように一瞬で全てを解決してくれるものではありませんが、着実に、そして誠実に子供の体の中で積み上げられています。今夜も口の痛みを堪えて眠る我が子の背中を撫でながら、その体の中で名探偵が一生懸命に働いている姿を想像してみてください。それは、子供が外の世界の洗礼を受けながら、逞しく生きていくための通過儀礼なのです。