大規模な地震や風水害などの災害が発生した際、地域の医療供給体制を守る要となるのが災害拠点病院です。災害拠点病院について正しいのはどれかという問いに対して、まず最も基本的な事実は、この病院を指定するのは各都道府県の知事であるという点です。厚生労働大臣が直接指定するのではなく、地域の地理的条件や人口密度、既存の医療リソースを詳細に把握している都道府県知事が、一定の厳格な基準を満たす医療機関の中から選定を行います。この制度は一九九五年の阪神淡路大震災での教訓を基に、一九九六年に創設されました。災害拠点病院は役割によって二つのカテゴリーに分類されます。一つは都道府県災害拠点病院で、各都道府県に原則一箇所以上が設置され、県全体の災害医療の司令塔として機能します。もう一つは地域災害拠点病院で、概ね二次救急医療圏ごとに一箇所以上が指定され、実際に被災地で発生した傷病者の受け入れや治療の中心的役割を担います。設備面での要件も極めて厳しく、建物が高い耐震性能を有していることは絶対条件です。また、電気やガス、水道といったライフラインが寸断された最悪の状況下でも診療機能を維持できるよう、通常時の数日分の活動を支える自家発電機や貯水タンク、燃料、食料、飲料水の備蓄が義務付けられています。さらに、通信手段の確保も重要であり、通常の電話回線が不通になった場合に備えて衛星電話などの代替手段を持ち、広域災害救急医療情報システムであるEMISを通じて、被災状況や患者の受け入れ可否をリアルタイムで発信する体制が整っていなければなりません。運用面では、災害派遣医療チーム、いわゆるDMATを保有し、要請に応じて迅速に現場へ派遣できる体制があることも指定の必須条件です。二十四時間体制で重症者の緊急受け入れが可能であり、多くの傷病者が押し寄せた際のトリアージ能力を維持するために、事務職を含む全職員が定期的な訓練を行うことも求められます。このように災害拠点病院は、単なる医療機関を超えて、いかなる極限状態においても機能し続けることが期待される、地域社会の安全保障の根幹を成す施設なのです。
災害拠点病院の定義と役割の正解