リンパ節が腫れた時、多くの人が気になるのが「痛み」の有無でしょう。「痛いから何か悪い病気なのでは?」と心配になる方もいれば、逆に「痛くないから大丈夫だろう」と楽観的に考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、リンパ節の腫れにおいて、痛みの有無は、その原因を推測する上で重要な手がかりとなるものの、一概に「痛いから安全」「痛くないから危険」と断定することはできません。一般的に、細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入し、リンパ節で免疫細胞が活発に戦っている時に起こる「反応性リンパ節炎」では、炎症反応が急激に起こるため、腫れと共に痛みを伴うことが多く見られます。風邪をひいた時に首のリンパ節が腫れて痛んだり、虫歯で顎の下が痛く腫れたりするのが典型的な例です。この場合の痛みは、体がきちんと異物と戦っている証拠とも言え、原因となる感染症が治れば、腫れも痛みも自然に引いていきます。一方で、しばしば「痛くないリンパの腫れは危険なサイン」と言われることがあります。これは、悪性リンパ腫や他のがんの転移といった、悪性の病気によるリンパ節の腫れが、初期の段階では痛みを伴わないことが多いからです。がん細胞は、体内でゆっくりと増殖していくため、急激な炎症反応が起こらず、痛みを感じないまま、リンパ節が徐々に大きくなっていきます。触ると、ゴムまりのように硬く、あまり動かないしこりとして感じられることも特徴です。しかし、この情報だけで「痛くないから、がんだ」と結論づけるのは早計です。痛みを伴わない良性のリンパ節の腫れも存在しますし、逆に、悪性リンパ腫が大きくなって神経を圧迫したり、炎症を伴ったりして、痛みが出ることもあります。つまり、痛みの有無だけで良性か悪性かを自己判断することは、非常に危険なのです。重要なのは、痛みの有無にかかわらず、リンパ節の腫れに気づいたら、その大きさ、硬さ、数、そして腫れが続いている期間をよく観察することです。そして、2~3週間経っても腫れが引かない、あるいは大きくなる、他の場所にも腫れが出てきた、などの場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の診断を仰ぐことが何よりも大切です。