首の周りにしこりを見つけると、多くの人がまず「リンパ節の腫れ」を疑います。確かに、リンパ節の腫れは首のしこりの最も一般的な原因の一つですが、実はそれ以外にも、様々な原因で首にしこりができることがあります。正確な診断のためには、リンパ節の腫れ以外の可能性も知っておくことが大切です。リンパ節以外で、首にしこりとして触れるものとして、まず考えられるのが「脂肪腫(しぼうしゅ)」です。これは、皮下にできる脂肪細胞の塊で、良性の腫瘍です。触ると、やわらかく、皮膚の下で少し動くような感じがします。通常、痛みはなく、ゆっくりと大きくなることがありますが、悪性化することはほとんどありません。次に、「粉瘤(ふんりゅう)」、あるいは「アテローム」とも呼ばれるものです。これは、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に垢(あか)や皮脂といった老廃物が溜まってできたものです。しこりの中心に、黒い点(開口部)が見えることもあります。普段は痛みがありませんが、細菌感染を起こすと、赤く腫れあがり、強い痛みを伴うことがあります。また、甲状腺の病気も、首の前のほう、喉仏の下あたりにしこりを作る原因となります。「甲状腺腫瘍(良性・悪性)」や、「亜急性甲状腺炎」といった病気が考えられます。甲状腺のしこりは、つばを飲み込むと上下に動くのが特徴です。動悸や体重減少、手の震えなどの症状を伴うこともあります。耳の下や顎の下にできるしこりでは、「耳下腺腫瘍」や「顎下腺腫瘍」といった、唾液を作る臓器(唾液腺)の腫瘍の可能性もあります。これも多くは良性ですが、悪性の可能性も否定できません。さらに、生まれつきの原因による「正中頸嚢胞(せいちゅうけいのうほう)」や「側頸嚢胞(そくけいのうほう)」といった、袋状のできものが、子供から大人になって初めて気づかれることもあります。このように、首のしこりの原因は実に様々です。いずれの場合も、自己判断は禁物です。気になるしこりを見つけたら、まずは耳鼻咽喉科や皮膚科、あるいは内科を受診し、専門医による正確な診断を受けることが、適切な治療と安心への第一歩となります。