病院を運営していく上で、いつ実施されるか分からない行政監査は、経営陣や事務部門にとって常に頭の痛い問題です。しかし、監査の直前になって慌てて書類を整備したり、整合性を合わせようとしたりすることは、かえって不正を疑われる原因となり、根本的な解決にはなりません。監査で指摘を受けないための最善の策は、監査を意識した「適正な管理」を日常の業務フローに完全に組み込んでしまうことです。まず、最も重要なのは人員配置の管理です。医療法や診療報酬の施設基準では、医師や看護師の配置数が厳格に定められています。これを守るためには、単に頭数を揃えるだけでなく、有給休暇や研修期間を含めた実働時間を正確に把握し、基準を下回る期間が生じないようリアルタイムでモニタリングするシステムが不可欠です。次に、診療記録、すなわちカルテの充実です。監査において最も頻繁に指摘を受けるのは、診療報酬を算定しているにもかかわらず、その根拠となる医師の記載や検査結果の裏付けが不十分なケースです。これを防ぐには、各診療科での定期的なカルテ監査を内部で実施し、記載漏れや矛盾がないかを相互にチェックする体制を構築する必要があります。特に、高額な加算を算定する場合には、その要件となるカンファレンスの記録や指導内容の要約が必須となりますが、これらが定型文の使い回しにならないよう、個々の患者に即した具体的な内容を残す習慣を徹底しなければなりません。また、薬剤や医薬品の在庫管理と請求の整合性も重要なポイントです。購入した薬品の量と、実際に使用して請求した量に大きな乖離があれば、架空請求や横流しを疑われることになります。さらに、事務部門においては、診療報酬の算定ルールの変更をいち早くキャッチし、電算システムのマスター更新を正確に行うことが求められます。監査対策とは、特別なことをすることではなく、本来あるべき医療の姿を正確に記録し、説明できるように準備しておくことです。全職員が「すべての行為は記録に基づき評価される」という意識を持ち、日々の業務を遂行することが、結果として病院を守り、質の高い医療を提供し続けるための最強の防衛策となるのです。
病院監査で指摘を受けないための日々の管理術