大人がヘルパンギーナにかかる場合、その感染源のほとんどは、身近な子供、特に自分の子供からであるケースが圧倒的です。保育園や幼稚園で流行しているヘルパンギーナを子供が家庭に持ち帰り、看病しているうちに親が感染してしまう、というのが典型的なパターンです。子供は比較的軽い症状で数日で治ることも多いため、「まさか自分にうつるとは」と油断していると、後で地獄のような症状に苦しむことになります。ヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルスは、非常に感染力が強く、その主な感染経路は三つあります。一つは、感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込む「飛沫感染」。二つ目は、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることで感染する「接触感染」。そして三つ目が、最も厄介で、家庭内感染の主な原因となる「糞口感染」です。ヘルパンギーナのウイルスは、症状が治まった後も、長い場合だと二週間から四週間にわたって、便の中から排出され続けます。そのため、感染した子供のおむつを替えた後や、トイレの補助をした後に、手洗いが不十分だと、親の手にウイルスが付着し、そこから口に入って感染してしまうのです。この家庭内での感染連鎖を防ぐためには、親が徹底した感染対策を講じるしかありません。まず、基本中の基本は「手洗い」です。子供の世話をした後、食事の前、トイレの後など、あらゆる場面で、石鹸と流水で丁寧に手を洗うことを習慣づけましょう。アルコールベースの手指消毒剤も有効です。次に、「タオルの共用を避ける」こと。洗面所やトイレのタオルは、家族一人ひとりで別のものを使うか、ペーパータオルに切り替えるのが理想的です。食器やコップの共有も、念のため避けた方が良いでしょう。そして、最も重要なのが「おむつや便の適切な処理」です。おむつを替える際は、使い捨ての手袋を使用し、おむつはビニール袋に入れてしっかりと口を縛ってから捨てます。処理後は、必ず石鹸で手を洗いましょう。子供は未来の宝ですが、時として強力な感染症の運び屋にもなります。そのことを理解し、正しい知識で防御することが、自分自身の健康と、家庭の平和を守ることに繋がるのです。