RSウイルスは、健康な成人にとっては「長引く厄介な風邪」で済むことが多いですが、特定の基礎疾患を持つ人にとっては、重症化し、回復までに非常に長い時間を要する危険な感染症となり得ます。特に注意が必要なのは、呼吸器系や循環器系に持病のある方々です。最もリスクが高いとされるのが、気管支喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった慢性的な呼吸器疾患を持つ人です。これらの疾患を持つ人は、もともと気道が過敏であったり、呼吸機能が低下していたりするため、RSウイルスが下気道で炎症を起こすと、症状が急激に悪化しやすくなります。喘息の重篤な発作を誘発したり、COPDの急性増悪を引き起こしたりして、強い呼吸困難に陥り、入院治療や酸素吸入が必要になるケースも少なくありません。このような場合、通常の回復期間である一週間から十日では到底治まらず、肺炎などの合併症を併発すると、数週間にわたる入院と、退院後も数ヶ月に及ぶリハビリが必要になることがあります。また、心不全などの心疾患を持つ人もハイリスク群です。RSウイルス感染による発熱や呼吸器症状は、心臓に大きな負担をかけ、心不全の状態を悪化させる可能性があります。高齢者も注意が必要です。加齢に伴い、心肺機能や免疫力は全体的に低下しているため、若者であれば軽症で済む感染でも、容易に肺炎を引き起こし、重症化しやすい傾向があります。さらに、がん治療中で免疫抑制剤を使用している人や、臓器移植を受けた人など、免疫機能が低下している状態にある人も、ウイルスをうまく排除できずに感染が重篤化し、治癒までの期間が大幅に長引くリスクがあります。もし、これらの基礎疾患をお持ちの方がRSウイルスに感染した疑いがある場合は、決して自己判断で様子を見ることなく、できるだけ早期にかかりつけの主治医に相談し、適切な指示を仰ぐことが、重症化を防ぎ、回復への道のりを少しでも短くするために不可欠です。
基礎疾患があると長引く大人のRSウイルス重症化