脇の下、いわゆる腋窩(えきか)は、多くのリンパ節が集まっている場所です。この部分に腫れやしこりを見つけると、不安に感じる方は少なくありません。脇の下のリンパ節の腫れは、様々な原因で起こりますが、特に女性の場合は、乳房との関連を常に念頭に置く必要があります。脇の下のリンパ節が腫れる最も一般的な原因は、腕や手の怪我、虫刺され、あるいは予防接種などによる、局所的な炎症反応です。腕から入った細菌や異物に対して、最も近い場所にある脇の下のリンパ節が反応し、一時的に腫れるのです。この場合は、原因がはっきりしており、炎症が治まれば腫れも引いていきます。しかし、女性が脇の下のリンパ節の腫れに気づいた時に、最も警戒しなければならないのが「乳がん」の可能性です。乳房にできたがん細胞が、リンパの流れに乗って、最初にたどり着きやすいのが、この脇の下のリンパ節なのです。これを「腋窩リンパ節転移」と呼びます。初期の段階では、リンパ節の腫れ以外に症状がないことも多く、乳房自体にしこりを触れない場合でも、リンパ節に転移が起こっていることがあります。そのため、脇の下にしこりや腫れを触れた場合は、必ずセルフチェックで乳房にもしこりやひきつれ、乳頭からの分泌物などがないかを確認することが重要です。そして、何よりも大切なのが、速やかに専門医の診察を受けることです。脇の下のリンパ節の腫れや、乳房の異常に関する専門の診療科は「乳腺外科」です。乳腺外科では、マンモグラフィ(乳房X線検査)や超音波(エコー)検査、必要に応じて細胞や組織を採取する検査などを行い、腫れの原因が乳がんによるものかどうかを正確に診断します。もちろん、脇の下のリンパ節が腫れているからといって、必ずしも乳がんとは限りません。良性の乳腺症や、前述の炎症反応であることの方がはるかに多いのです。しかし、万が一の可能性を見逃さないために、そして何より「乳がんではない」という安心を得るために、勇気を出して乳腺外科を受診することが、女性にとって非常に重要な自己管理と言えるでしょう。