RSウイルス感染症と聞くと、乳幼児が重い気管支炎や肺炎を起こす病気というイメージが強いかもしれません。しかし、このウイルスは大人にも感染し、時に長引くつらい症状を引き起こします。では、大人がRSウイルスに感染した場合、完全に回復するまでに一体どれくらいの期間を要するのでしょうか。一般的に、健康な成人がRSウイルスに感染した場合、その症状は一週間から十日程度で軽快に向かうとされています。しかし、これはあくまで症状のピークが過ぎるまでの目安であり、「完全に治る」までにはもう少し時間が必要なケースが少なくありません。まず、ウイルスに感染してから二日から八日程度の潜伏期間を経て、鼻水、喉の痛み、発熱といった風邪によく似た症状が現れます。この初期症状が二日から三日続いた後、咳が徐々に強くなり、症状のピークを迎えます。この時期には、痰が絡んだ湿った咳が激しくなり、呼吸が苦しく感じられたり、全身の倦怠感が強くなったりします。この最もつらい期間が三日から五日ほど続いた後、徐々に解熱し、体のだるさも和らいでいきます。しかし、多くの大人が悩まされるのが、熱が下がり体調が回復してきた後も、しつこく残る咳です。この咳は、気道の過敏性が高まった状態が続くために起こり、完全に治まるまでに三週間から一ヶ月以上かかることも珍しくありません。したがって、「主な症状が落ち着くまで」は一週間から十日、「咳まで含めて完全に元通りになるまで」と考えると、約一ヶ月程度を見ておく必要があると言えるでしょう。単なる風邪と侮らず、症状が長引くことを前提に、無理せず十分な休養を取ることが、結果的に回復を早める鍵となります。