足の付け根、いわゆる鼠径部にポコッとした膨らみを見つけた時、多くの人が「これは何だろう、何科に行けばいいのだろう」と不安になることでしょう。痛みがないことも多く、つい様子を見てしまいがちですが、その症状は鼠径ヘルニアの典型的なサインかもしれません。そして、この鼠径ヘルニアを診察・治療する専門の診療科は、結論から言うと「外科」です。特に「消化器外科」や「一般外科」が主な担当となります。なぜ外科なのかというと、鼠径ヘルニアは「脱腸」とも呼ばれるように、本来お腹の中にあるはずの腸などの内臓が、筋膜の弱い部分から皮膚の下に飛び出してしまっている状態だからです。そして、この状態を根本的に治す唯一の方法が「手術」であるため、手術を専門とする外科医が担当するのです。内科は薬物治療が中心であり、鼠径ヘルニアのように物理的な構造の問題を解決することはできません。したがって、鼠径ヘルニアが疑われる症状、つまり「鼠径部の柔らかい膨らみ」「立ったりお腹に力を入れたりすると膨らみ、横になると消える」「時折、引きつるような痛みや違和感がある」といったサインに気づいたら、迷わず外科の看板を掲げている病院やクリニックを受診することが、適切な診断と治療への最も確実な近道となります。近年では、鼠径ヘルニアの治療に特化した「ヘルニア外来」や「そけいヘルニア日帰り手術センター」などを設けている医療機関も増えてきました。こうした専門外来では、経験豊富な医師による正確な診断と、患者さんの状態に合わせた最新の治療法が提供されることが期待できます。まずは勇気を出して、外科の扉を叩くこと。それが、長引く不安から解放されるための最初の、そして最も重要な一歩なのです。