激しい咳が続いたからといって、誰もが肋骨を骨折するわけではありません。同じように咳をしていても、骨折しやすい人と、そうでない人がいます。その違いはどこにあるのでしょうか。特に「女性」や「高齢者」は、咳による肋骨疲労骨折のリスクが高いとされていますが、その背景には、骨の強度に関わる明確な理由が存在します。まず、高齢者が骨折しやすい最大の理由は、加齢に伴う「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」です。骨粗鬆症とは、骨の量が減少し、骨の質が劣化して、骨がスカスカで脆くなってしまう病気です。骨自体の強度が低下しているため、健康な人であれば何でもないような咳の衝撃でも、ポキッと骨が折れてしまうのです。高齢者の場合、咳だけでなく、くしゃみや、ベッドから起き上がるといった日常的な動作でさえも、肋骨や背骨(圧迫骨折)の骨折の原因となり得ます。次に、女性、特に閉経後の女性が骨折しやすい理由も、この骨粗鬆症と深く関係しています。女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、骨の新陳代謝において、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える重要な働きがあります。しかし、閉経を迎えると、このエストロゲンの分泌が急激に減少するため、骨の密度が急速に低下し、骨粗鬆症が進行しやすくなるのです。そのため、五十代以降の女性は、同年代の男性に比べて、はるかに骨折のリスクが高まります。また、若い女性であっても、過度なダイエットによる栄養不足や、運動不足、あるいは月経不順などでホルモンバランスが乱れていると、骨密度が低下していることがあります。さらに、これらの骨の強度という内的要因に加えて、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった、慢性的に激しい咳を繰り返す病気を持っている場合も、骨折のリスクは格段に上がります。もし、ご自身がこれらのリスク要因に当てはまる場合は、長引く咳を放置せず、早めに治療を開始することが、つらい肋骨骨折を未然に防ぐための最も重要な対策となるのです。