喉の痛みは日常的によくある症状ですが、中には放置すると命に関わるような危険な病気が隠れていることがあります。いつもの風邪とは違う、「これはおかしい」と感じる危険なサインを知っておくことは、自分や家族の身を守るために非常に重要です。もし以下のような症状が一つでも当てはまる場合は、様子を見ずに、速やかに耳鼻咽喉科、あるいは救急外来を受診してください。まず、最も注意すべきサインが「呼吸困難」です。喉の奥が急激に腫れることで空気の通り道が狭くなり、「息が吸いにくい」「ゼーゼー、ヒューヒューという音がする」といった症状が現れた場合は、一刻を争う緊急事態です。これは「急性喉頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)」という、喉の奥にある蓋(喉頭蓋)が細菌感染でパンパンに腫れ上がる病気の可能性があり、窒息の危険が非常に高いです。次に、「口が開けにくい、唾も飲み込めないほどの激痛」です。単なる扁桃炎が悪化し、扁桃腺の周囲に膿がたまる「扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)」を起こしている可能性があります。これを放置すると、膿が首の深い部分や胸部にまで広がり、重篤な感染症を引き起こすことがあります。また、「片側の扁桃腺だけが異常に腫れている」場合や、「数週間にわたって喉の痛みが続き、徐々に悪化する」場合も注意が必要です。稀ではありますが、扁桃がんや咽頭がんといった悪性腫瘍の可能性も否定できません。さらに、「高熱に加えて、首のリンパ節がひどく腫れ、皮膚に発疹が出ている」場合は、伝染性単核球症(EBウイルス感染症)などの全身性の感染症が考えられます。これらの危険なサインは、一般的な風邪の症状とは明らかに異なります。「いつもと違う」「尋常じゃない痛みだ」と感じる直感を信じ、躊躇なく専門医の診察を受ける勇気を持つことが、最悪の事態を避けるための鍵となるのです。