通常であれば問題にならないような、ごく普通の日光を浴びただけで、皮膚に強い赤みや痒み、水ぶくれといった、日焼けとは異なる異常な皮膚反応が起きてしまう。このような症状が現れた場合、それは「光線過敏症」という病気かもしれません。この病気を持つ人にとって、日焼け止めは単なる美容目的のものではなく、皮膚を守るために不可欠な「治療の一部」となります。光線過敏症は、その原因によっていくつかのタイプに分けられます。特定の薬剤(降圧剤、抗菌薬、抗うつ薬など)の服用や、湿布薬の使用が原因で、日光に対して過敏になる「薬剤性光線過敏症」。また、遺伝的な要因や代謝異常によって発症する「内因性光線過敏症」(多形日光疹、日光蕁麻疹など)。さらに、特定の植物や香料などに触れた皮膚が日光に当たることで反応する「光接触皮膚炎」などがあります。これらの病気と診断された場合、皮膚科医が行う治療の第一歩は、原因の特定と除去(原因薬剤の中止など)ですが、それと同時に、最も重要な指導となるのが「徹底した遮光」です。そして、その中心的な役割を担うのが、日焼け止めなのです。光線過敏症の患者さんに皮膚科医が推奨する日焼け止めは、一般的なものとは選び方の基準が少し異なります。まず、UVAとUVBの両方を強力にブロックする必要があるため、SPF50+、PA++++という最高レベルの防御能を持つ製品が選択されます。さらに、わずかな紫外線にも反応してしまうため、塗りムラが許されません。肌に均一に、そして厚く塗布することが求められます。防御剤の種類としては、肌への刺激が少ない「紫外線散乱剤(ノンケミカル)」をベースとしつつ、UVAを効果的に防ぐために一部の「紫外線吸収剤」を組み合わせた、高機能な製品が選ばれることもあります。これは、専門医が患者の肌の状態や病気のタイプを見極めた上で判断します。光線過敏症の治療は、皮膚科医の指導のもと、正しい知識で日焼け止めを使いこなし、帽子や日傘、長袖の衣類などを組み合わせた、多角的な遮光対策を生涯にわたって継続していくことが何よりも大切になるのです。