ある日、ふと鏡を見て「なんだか首が腫れている気がする」、あるいは家族から「首、太くなった?」と指摘された時、多くの人がまず思い浮かべるのは「耳鼻咽喉科」かもしれません。確かに、喉の痛みや声がれを伴う場合、扁桃炎や咽頭炎などを疑って耳鼻咽喉科を受診するのは正しい判断です。しかし、痛みなどの症状がなく、首の前の、特に喉仏の下あたりが全体的に、あるいは部分的に腫れている場合、それは「甲状腺」の腫れである可能性が高いです。そして、その場合の専門診療科は「内分泌内科」となります。では、どうすれば耳鼻咽喉科系の病気による腫れと、甲状腺の腫れを見分けることができるのでしょうか。一つの簡単なセルフチェックの方法は、鏡を見ながら唾を飲み込んでみることです。甲状腺は、気管に付着している臓器なので、唾を飲み込むと、腫れている部分が上下に動きます。もし、腫れが一緒に動けば、それは甲状腺の腫れである可能性が非常に高いと言えます。一方、リンパ節の腫れなどの場合は、飲み込んでも動きません。甲状腺の腫れには、甲状腺全体が均一に腫れる「びまん性甲状腺腫」と、部分的にしこりができる「結節性甲状腺腫」があります。バセドウ病や橋本病では、びまん性の腫れが見られることが多く、首全体がふっくらとした印象になります。結節性の腫れ、いわゆる「しこり」の場合は、そのほとんどが良性ですが、中には悪性腫瘍(甲状腺がん)の可能性もゼロではありません。特に、しこりが非常に硬い、表面がゴツゴツしている、急に大きくなった、声がれを伴うといった場合は、注意が必要です。しかし、これらはあくまで目安であり、自己判断は非常に危険です。腫れの性質や、その裏にある甲状腺機能の異常を正確に診断するためには、専門医による触診、そして超音波検査や血液検査が不可欠です。首の腫れに気づいたら、まずは唾を飲み込んでみて、もし腫れが動くようであれば、迷わず内科、できれば内分泌内科を受診することをお勧めします。それが、適切な診断への最短ルートです。
首の腫れは耳鼻咽喉科?甲状腺疾患との見分け方