咳のしすぎで肋骨にヒビが入ってしまった場合、誰もが気になるのは「この耐えがたい痛みは、一体いつまで続くのか」そして「完全に治るまでには、どれくらいの期間がかかるのか」ということでしょう。肋骨の疲労骨折の治癒期間は、骨折の程度や年齢、本人の回復力、そして何よりも安静を保てるかどうかによって大きく異なりますが、一般的な目安を知っておくことは、治療へのモチベーションを維持する上で役立ちます。まず、痛みのピークは、受傷直後から一週間から二週間程度続くことがほとんどです。この時期は、咳やくしゃみはもちろん、深呼吸や寝返りといった些細な動作でも激痛が走る、最もつらい期間です。医師から処方された痛み止めを適切に使い、バストバンドなどで胸郭を固定し、とにかく安静に過ごすことが求められます。この急性期を過ぎると、徐々に鋭い痛みは和らぎ、鈍い痛みに変わっていきます。骨の修復プロセスが始まり、骨折した部分に新しい骨(仮骨)が作られ始める時期です。日常生活に大きな支障がない程度に痛みが落ち着くまでには、おおよそ三週間から四週間ほどかかると考えておくと良いでしょう。そして、骨が癒合し、運動などをしても痛みを感じなくなる、いわゆる「全治」までの期間は、一般的に六週間から八週間、つまり一ヶ月半から二ヶ月程度が目安となります。ただし、これはあくまで骨がくっつくまでの期間です。痛みがなくなったからといって、すぐに激しい運動を再開すると、再骨折のリスクがあります。医師の許可が出るまでは、無理は禁物です。また、この回復期間は、咳が完全に治まっていることが大前提です。もし、骨折の治療中に再び激しい咳が出始めると、治りかけていた骨に再び負担がかかり、治癒期間が大幅に長引いてしまう可能性があります。咳の原因治療と、骨折部の安静。この二つを両輪として、焦らずじっくりと取り組むことが、結果的に最も早い回復へと繋がるのです。