RSウイルスに感染してしまった時、誰もが願うのは「一日でも早く、このつらい症状から解放されたい」ということです。残念ながら、RSウイルスそのものを直接攻撃する特効薬は現在のところ存在しません。そのため、治療の基本は、自身の免疫力がウイルスを打ち負かすのを助けるための「対症療法」と、回復を後押しする「適切な療養」になります。これらを正しく行うことが、治癒までの期間を短縮し、つらい時期を乗り切るための鍵となります。まず、医療機関で受けられる治療は、症状を和らげることに主眼が置かれます。つらい咳に対しては、咳中枢の興奮を鎮める咳止め薬や、痰を出しやすくする去痰薬が処方されます。発熱や頭痛、関節痛に対しては、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤が用いられます。これらの薬を医師の指示通りに服用することで、体力の消耗を防ぎ、療養に専念しやすくなります。そして、薬以上に重要なのが自宅での過ごし方です。何よりも優先すべきは「十分な休息」です。仕事や家事は休み、体を横にしてエネルギーの消耗を最小限に抑えましょう。睡眠は最大の回復薬です。次に大切なのが「水分補給」です。発熱や呼吸によって、体は気づかないうちに多くの水分を失っています。水やお茶、経口補水液などをこまめに摂取し、脱水を防ぐことが、痰を柔らかくし、体の回復機能を維持するために不可欠です。また、「加湿」も非常に効果的です。空気が乾燥していると、気道の粘膜が刺激されて咳が悪化します。加湿器を使用したり、濡れタオルを部屋に干したりして、室内の湿度を五十から六十パーセントに保つよう心がけましょう。マスクを着用することも、喉の湿度を保ち、咳の刺激を和らげるのに役立ちます。食事は、消化が良く、栄養価の高いものを無理のない範囲で摂るようにしましょう。特効薬がないからこそ、こうした地道な療養の一つひとつが、ウイルスと戦う体を支え、結果として回復までの期間を左右するのです。