毎日を忙しく過ごす中で、慢性的な疲労感やちょっとした体調の変化を「いつものことだから」「年齢のせいかな」と見過ごしてしまってはいませんか。特に女性の場合、月経周期やライフステージの変化によって体調が揺らぎやすいため、多くの不調を個人の体質や更年期症状として片付けてしまいがちです。しかし、その「いつもの不調」が、実は甲状腺からの重要なサインである可能性を、ぜひ知っておいてください。甲状腺ホルモンは、体のエネルギー代謝を司る、いわば「元気の源」となるホルモンです。このホルモンの分泌が多すぎても(甲状腺機能亢進症)、少なすぎても(甲状腺機能低下症)、心と体に様々なサインが現れます。例えば、甲状腺機能が低下すると、体の代謝が全体的にスローダウンします。そのため、「十分寝ているはずなのに、朝から鉛のように体が重い」「食欲はないのに、なぜか体重が増えてむくむ」「肌が乾燥してカサカサする」「髪の毛が抜けやすくなった」「常に寒気を感じ、手足が冷たい」「物忘れがひどく、集中力が続かない」「理由もなく気分が落ち込み、やる気が出ない」といった症状が現れます。これらは、多くの女性が経験する不定愁訴と非常によく似ています。一方で、甲状腺機能が亢進すると、体は常に全力疾走しているような状態になります。「何もしていないのに心臓がドキドキする(動悸)」「たくさん食べるのに、体重がどんどん減っていく」「暑がりになり、異常に汗をかく」「手の指が細かく震える」「イライラしやすくなった」「寝つきが悪い」といった症状が特徴です。これらのサインは、一つひとつは些細なことかもしれません。しかし、複数の症状が当てはまる場合や、数ヶ月にわたって改善しない場合は、甲状腺の病気を疑い、専門医に相談する価値が十分にあります。あなたのそのつらい疲れは、気のせいでも、怠けでもなく、治療によって改善できる体の不調なのかもしれないのです。