原因不明の体調不良に悩み、内科を受診して血液検査を受けた結果、「甲状腺ホルモンの値に少し異常があるようです」と告げられた。ここから、本格的な甲状腺疾患との向き合いが始まります。この時、治療を成功させ、長期にわたって良好な体調を維持するために最も重要なこと、それは「甲状腺を専門とする医師」を見つけ、継続的に診てもらうことです。もちろん、一般的な内科でも甲状腺疾患の初期対応や、安定期の薬の処方は可能です。しかし、甲状腺の病気は、非常に繊細なホルモンバランスの調整が求められ、また、生涯にわたって付き合っていく必要のある慢性疾患であることが少なくありません。だからこそ、専門医による深い知識と豊富な経験が不可欠なのです。甲状腺専門医、すなわち内分泌代謝科医は、血液検査の数値をただ正常範囲内に入れることだけを目的とはしません。その数値の背景にある患者さん一人ひとりの体調の変化や、生活の質(QOL)を重視し、薬の量を微調整していきます。同じFT4の数値であっても、ある人にとっては快適な状態が、別の人にとってはまだ不調を感じる状態である、ということを熟知しています。また、甲状腺疾患は、妊娠や出産、加齢といった女性のライフステージの変化によって、ホルモンの状態が大きく変動することがあります。専門医は、こうした変化を予測し、先回りして治療方針を調整することができます。妊娠を希望する女性に対しては、胎児への影響が少ない薬を選択し、適切な甲状腺機能を維持するためのきめ細やかな管理を行います。さらに、定期的な超音波検査による甲状腺の形状変化の観察や、稀に発生する甲状腺腫瘍の早期発見など、長期的な視点でのフォローアップも専門医の重要な役割です。もし、かかりつけの内科で甲状腺疾患と診断された場合は、一度、専門医のいる病院を紹介してもらい、セカンドオピニオンを求めることも賢明な選択です。信頼できる専門医というパートナーを見つけることこそが、甲状腺の病気と上手に付き合っていくための、最も確かな基盤となるのです。
甲状腺の病気は専門医を見つけることが大切