お子さんの足の付け根が泣いたり、お腹に力を入れたりした時にポコッと膨らむ。オムツ替えの時に偶然気づき、心配になってスマートフォンで検索する親御さんは非常に多いでしょう。その症状は、小児に非常に多い病気の一つである「小児鼠径ヘルニア」の可能性が高いです。そして、ここで絶対に間違えてはいけないのが、受診すべき診療科です。大人の場合は「外科」や「消化器外科」が専門ですが、子供の場合は「小児外科」が専門の診療科となります。なぜ、子供と大人で診療科が異なるのでしょうか。それは、病気の原因が根本的に違うからです。大人の鼠径ヘルニアは、加齢などによって腹壁の筋膜が弱くなって発症する後天的なものがほとんどです。一方、小児鼠径ヘルニアは、胎児の時にお腹の中にあった「腹膜鞘状突起」というトンネル状の管が出生後も閉じずに残ってしまい、そこから腸などが飛び出してくるという先天的な原因で起こります。このように、成り立ちが全く異なるため、手術の方法や麻酔の管理、術後のケアなど、全てのプロセスにおいて子供の体に特化した専門的な知識と技術が求められます。小児外科医は、小さな子供の体の構造や成長を熟知しており、手術の傷がなるべく目立たないように、そして成長に影響が出ないように、細心の注意を払って治療を行います。一般的な外科では、小児の麻酔管理や手術に対応していない場合がほとんどです。もし、かかりつけの小児科で鼠径ヘルニアを指摘された場合は、必ず小児外科のある病院への紹介状を書いてもらいましょう。また、自分で病院を探す際も、必ず「小児外科」の看板を掲げている医療機関を選んでください。大きなこども病院や、大学病院などに設置されていることが多いです。大切な我が子の治療です。遠回りせず、最初から子供の体の専門家である小児外科医に診てもらうことが、最も安全で確実な選択なのです。
子供の鼠径ヘルニア、大人と違う診療科