肋骨疲労骨折とは?咳の衝撃が引き起こすケガ
咳をするたびに胸に響く鋭い痛み。それは単なる筋肉痛ではなく、「肋骨疲労骨折」という、れっきとした骨折かもしれません。疲労骨折と聞くと、スポーツ選手が過度なトレーニングで起こすケガというイメージが強いですが、実は激しい咳の繰り返しによっても、あばらの骨である肋骨に発生することがあるのです。私たちの肋骨は、呼吸に合わせて柔軟に動く、比較的細くて薄い骨です。一方、咳は非常に爆発的なエネルギーを伴う身体反応です。「ゴホン!」という一回の咳で、肋骨やその周りの筋肉には、瞬間的に自分の体重の何倍もの負荷がかかると言われています。風邪や気管支炎などで、この強力な衝撃が何日も、何百回、何千回と繰り返し肋骨に加わり続けると、金属疲労のように骨の同じ場所に微細なダメージが蓄積していきます。そして、ついに骨の耐久力の限界を超えた時、ポキッと折れるのではなく、微細なヒビが入ってしまうのです。これが肋骨疲労骨折のメカニズムです。特に、骨がもろくなっている高齢者や、骨密度の低い女性は、比較的軽い咳でも発症しやすい傾向があります。骨折しやすい部位は、脇腹に近い、比較的動きの大きい第七から第十肋骨あたりが多いとされています。症状の特徴は、咳や深呼吸、体をひねる、寝返りをうつといった、胸郭が動く動作の際に、骨折した部分に限定して「ズキッ」「ピキッ」という鋭い痛みが走ることです。また、痛い場所を指で押すと、ピンポイントで激痛を感じる「圧痛(あっつう)」も重要なサインです。もし、長引く咳の後にこのような症状が現れたら、単なる筋肉痛と自己判断せずに、医療機関を受診することを検討してください。適切な診断を受け、痛みを管理しながら安静に過ごすことが、つらい痛みからの早期回復に繋がります。