喉が少しイガイガする、風邪のひき始めかな、という程度の軽い喉の痛みであれば、まずは薬局やドラッグストアで薬剤師に相談し、市販薬で様子を見るという方も多いでしょう。確かに、初期の段階であれば、のど飴やトローチ、うがい薬、消炎鎮痛成分の入った風邪薬などで症状が緩和することもあります。しかし、全ての喉の痛みが市販薬で対応できるわけではありません。中には、一刻も早く医療機関を受診すべきケースも存在します。では、その見極めのポイントはどこにあるのでしょうか。まず、市販薬を二日から三日使用しても、症状が全く改善しない、あるいはむしろ悪化している場合は、病院を受診するべきサインです。市販薬で対応できるのは、あくまでごく初期の軽い炎症までです。症状が長引いている時点で、より強い炎症が起きているか、あるいはウイルスではなく細菌感染の可能性が考えられます。細菌感染の場合、抗生物質の投与が必要になりますが、これは医師の処方箋がなければ入手できません。次に、痛みの「強さ」と「種類」です。「唾を飲み込むのもつらいほどの激痛」「片側だけが異常に痛む」「鋭い針で刺されるような痛み」といった、尋常ではないレベルの痛みを感じた場合は、市販薬で様子を見る段階ではありません。扁桃周囲膿瘍などの重篤な状態に進行している可能性も考えられるため、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。また、喉の痛みに加えて、「高熱(三十八度以上)が続く」「息苦しさがある」「声が全く出ない」「口が開きにくい」といった他の症状を伴う場合も、危険な病気のサインである可能性が高いため、自己判断は禁物です。薬局の薬剤師は薬の専門家ですが、診断を行うことはできません。あくまで症状に応じた薬の提案はできますが、その症状の裏に何が隠れているかまでは判断できないのです。市販薬は、あくまで健康な人が軽い不調をセルフケアするためのもの。自分の症状を客観的に見つめ、少しでも「いつもと違う」「これはおかしい」と感じたら、迷わず専門家である医師の診断を仰ぐことが、結果的に早期回復と重症化予防に繋がるのです。