二歳になる娘が保育園からRSウイルスをもらってきたのは、去年の秋のことでした。最初は軽い鼻風邪のようでしたが、夜になるとゼロゼロと苦しそうな咳をし始め、小児科でRSウイルスの診断を受けました。幸い娘は高熱も出さず、食欲も旺盛で、五日ほどでケロッと回復。子供って強いな、と安堵したのも束の間、本当の悪夢はそこから始まりました。娘の看病で寝不足が続いていた私に、ウイルスは容赦なく牙を剥きました。まず襲ってきたのは、インフルエンザと勘違いするほどの悪寒と、三十九度を超える高熱。解熱剤を飲んでも全く効かず、体中の関節が悲鳴をあげました。その二日後、今度は激しい咳が始まりました。それは、ただの咳ではありません。胸の奥底から込み上げてくるような、一度始まると息もできなくなるほどの咳の発作でした。夜は咳き込んで眠れず、昼間は咳のしすぎで腹筋が筋肉痛になり、体力を根こそぎ奪われていきました。食事の味は全くせず、水を飲むことさえ苦痛でした。娘は元気いっぱいに走り回っている横で、私はソファから動くこともできず、ただひたすら耐えるだけ。子供は数日で治る軽い病気という世間のイメージと、自分の惨状とのギャップに、精神的にも追い詰められました。結局、高熱と全身の倦怠感が落ち着くまでに一週間。しかし、問題はその後もしつこく残った咳でした。熱は下がったのに、咳だけは一向に治まる気配がありません。会社に復帰しても、会議中に咳が止まらなくなり、周りに気を使わせてしまう始末。結局、呼吸器内科で「感染後咳嗽」と診断され、吸入薬を使い始めることになりました。その薬のおかげで少しずつ咳は落ち着きましたが、完全に気にならなくなるまでには、発症から実に一ヶ月以上という長い時間が必要でした。この体験を通じて、大人のRSウイルスが決して侮れない病気であることを、骨身に沁みて実感したのです。
子供は軽症、親は重症。私がRSウイルスから回復するまでの一ヶ月